一橋大学セミナー

一橋大学セミナー 一橋大学セミナー fuchigami2今回、弊社代表の淵上が一橋大学よりご依頼があり、2011年6月1日に一橋大学にてゲストスピー カーとして講義させて頂く機会がありました。企業の海外進出の税務面を支援するなかで、どのような事例があり、どのようなトピックがあるかといったことを 論じさせて頂きました。

今回のセミナーは質疑応答も含めて60分程の内容で、紙面の都合上省略させて頂いてますが、実際は大学生から様々な意見が飛び交いました。

ここに簡単ではありますが、その内容を簡単にご紹介させて頂きます。

*尚、弊社が通常企業で有料で実施する税務セミナーはより詳細な税務的な内容が中心となりますが、今回はあくまでも大学の授業の一環ということなので税務的な内容を期待されている方には物足りない内容かもしれませんが何卒ご理解ください。

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一橋大学の大学生の皆様、はじめまして。オプティ株式会社の淵上と申します。

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また一橋大学の教職員の方々におかれましては、今回このような機会を頂戴致しまして誠に有難うございます。

当社オプティ株式会社は、国際ビジネスに関するコンサルティングを行っております。今回、一橋大学商学部の 授業の一環として、国際ビジネスや国際税務の面から見た現在の日本の課題等について、スピーチのご依頼を賜りました。皆様に何かを教えるという立場では到 底ございませんが、日々の国際ビジネスの案件、国際税務の案件に触れる中で私自身がどのようなことを感じたか、あるいは国際税務等について最近どのような 議論があるのかといったことを簡単にお話させて頂ければと存じます。

まず、改めて当社についてご説明させてください。

当社は、千代田区に拠点を持つコンサルティング会社です。業務内容としては企業の海外進出に関する税務面・戦略面でのコンサルティングを行っています。お陰さまで上場企業100社以上を含む様々な企業様、また JETRO(日本貿易振興会)様といった公共の機関ともお付き合いをさせて頂いております。

 

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関西経済連合会のセミナーにて (フランス投資調整庁・関経連・大阪商工会議所共催セミナー)

また、私自身についてお話致しますと、大学卒業後、米国に留学し、その後大手半導体製造会社の海外販社の管理部門にて勤務していました。実際の業務内容とし ては、海外拠点の立ち上げや管理となります。その後、大手金融機関にて海外での現地法人での勤務や金融商品の開発、税務コンサルティング、新規事業の立ち上げ等を経験しました。その後帰国し、世界16カ国に18拠点を持つフランス系の税務・戦略コンサルティング会社であるロベンダル・マサイにて勤務しまし た。ベルギーやフランス、イタリア、オランダ等、欧州7カ国で数カ月に亘る研修を経て、同社にて国際税務部門を立ち上げ、マネージャーとして勤務しまし た。その中で様々な上場企業様の税務関係・戦略関係のコンサルティング案件に従事させて頂き、またフランス大使館や投資調整庁、関経連(関西経済連合 会)、大阪商工会議所等でも共同のセミナーを開催させて頂きました。

そして、2010年に国際税務戦略のコンサルティング会社を同僚のオランダ人と設立し今日に至ります。現在では世界各地の会計事務所や戦略コンサルティング会社と提携し、税務や調査面でのワンストップのソリューション提案を行っています。そしてこれらの強みを元に、弊社では企業の海外進出を様々な分野でサポートしています。

そこで今回は、弊社が実際にクライアント企業の海外進出をサポートしていく中で、企業が海外進出をする際に どのようなことを考慮して海外に進出していくかといった話をさせて頂きます。また特に、欧州付加価値税の専門家の立場から、国家間での税の争奪戦といった ことについて、間接税のみならず直接税の面からもいろいろと考えてみたいと思います。

セミナーの最後には、皆様のご質問も受けますので、いろいろご質問してください。

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一橋大学セミナー 一橋大学セミナー CIMG5383東日本大震災のスライドと共に

その前に、是非大学生の皆様にお話させて頂きたいお話があります。まずこのスライドを見て頂ければと思います。このスライドは、震災後の変わり果てた街を見 て呆然とたたずんでいる方の写真を掲載させて頂きました。ご存知の通り今年の3月11日に国難とも言うべき、未曾有の大災害に見舞われました。僕自身にとっても人生で生きてきた中で一番大きな災害でしたし、皆様にとってもそうだったと思います。

そして現在、日本では国を挙げて復興のために頑張っています。様々な企業や個人の方がボランティアや寄付をしたり、日本全体が一丸となって復興支援のために頑張っています。

ですが、復興というものは、いかんせん時間が掛ります。

じゃあ、どの位時間が掛るかというと、阪神大震災の例から考えると僕は最低でも10年は掛ると思っています。その位今回の災害は大きなインパクトを持っていたと思います。そして、10年掛ってようやく、この「復興」は一先ず一段落つくといったことになることでしょう。

ここにいらっしゃる皆さんは、大体18歳から20歳位の方々だと思います。ということは、この「復興の時 代」が10年間掛るとしたら、皆さんが28歳とか30歳になるまでずっと「復興」「復興」といった世の中です。「復興の時代」は、今まで、つまり2011 年3月11日より前に皆さんが生きてきた世界から、180度がらっと変わります。

それまでの時代はある意味「金儲けの時代」でした。六本木ヒルズに住む人たちが持てはやされていました、また学生の就職志望企業ランキングも給料の高い投資銀行や外資コンサル会社等が人気がありました。同時に正社員と派遣社員の格差も広が り、「ワーキングプア」と言った言葉も流行語となりました。このように、震災前の日本は、資本主義国家だから当たり前なのですが、「お金ばかりを考えてい る国」「自分ばかりを考えている国」だったのではないでしょうか。

ところが、「復興の時代」ではそのような世界観はあまり相手にされなくなってしまいます。

「復興の時代」では、どれだけ他人の痛みを感じてあげられるか、そしてどれだけ他人の痛みを和らげてあげられるかといったことが、お金よりももっと重要になっていると感じられます。

例えば、ユニクロの柳井さんや楽天の三木谷さん、ソフトバンクの孫さんは個人の資金から大量の寄付を致しました。また、パチンコのマルハンという会社のハン会長という方も7億円も寄付をしました。孫さんに至っては100億とか言う話です。本当にすごいことですよね。

ただ、もし震災前にこのような経営者が何らかの寄付行為等をしたりしたら、「売名行為だ」とか言う人も出たかもしれません。

ところは今回は純粋に「カッコいい」、そうみんな思ったのではないでしょうか。僕から言わせれば、大変おこ がましい言い方に聞こえてしまいますが、「ユニクロはこれで100年企業になったな」とすら思った位です。ですから、今までは僕はユニクロは買わない主義 だったのですが、今は積極的に応援しようとしてしまいます。それはやはりユニクロの、そして柳井さんの気持ちが素晴らしく、少しでも共感したいからです。

このように「復興の時代」では経済の論理といったことと別に、「人の心や気持ちをだれだけ考えられるか」ということが非常に大事になってくると思います。是非皆さんも今以上に人を思いやれる人間になってください。僕自身も頑張ろうと思います。是非頑張りましょう。

また、「復興の時代」では、沢山の不都合なことも発生し、更なる経済の悪化を促すことにもなります。一橋大学セミナー 一橋大学セミナー CIMG5384復興の時代に外から日本を支えよう

その最たるものが計画停電と放射能による風害です。計画停電や風害のおかげで沢山の企業の業績が水面下で悪 化しています。現在はまだそれほど表面化はしていませんが、今後はより多くの失業者が出ることでしょう。また、製造業などでは日本での製造は諦めて、海外 に進出する企業がもっともっと増えていくことでしょう。実際に当社でも海外に拠点を作りたいといった話は震災前よりよく聞くようになってきました。そして 企業の海外進出が加速すれば、日本国内での失業率はより高くなるという悪循環に見舞われることになります。

但し逆転の発想をしていけば、このような状況下で、皆さんはこれらの企業と共に海外に進出するチャンスがど んどん増えていくと思います。僕自身が海外で働いていた時にも感じたことですが、大手企業よりも中小企業の方が積極的に海外に進出しています。それこそ日 本では名前も聞いたことのないような企業が、世界では結構頑張っています。そして、会社の売上も海外の子会社の方が頑張っているという会社は結構あるんで す。

ここにいる皆様に関しても、これからの人生の中で、海外の企業とビジネスをしたり、またそれこそ海外で働くような人も沢山出てくることでしょう。

たとえば、上海で日本人相手のラーメン屋でもやるかというような人も出てくることでしょう。でも、東京の飲食店で勤めていても、閑古鳥が鳴いているようなら、その方が合理的だし効率的だと思います。

このように、若い人が海外で働くということを一部の面だけを捉えて「人材の海外流出」と取る人もいるかも知れません。でも僕はそのようにいろいろな人たちが積極的に海外に進出し、現地で成功し、そのお金で外から日本を支えていって欲しいなと思っています。

今回のセミナーでは、企業が海外取引や海外進出をする際に、どのような点を考慮して海外に進出していくのかということをお話します。

またその後に、税務面ではどんなトピックがあるのか、といったこともお話させて頂きます。

ここにいらっしゃる方全てが、今後海外とのビジネスに従事したり、国際税務の専門家という立場になるわけで はありませんが、グローバルな企業競争の中で現在どのような論点があるのかということを感じとって頂ければ幸いです。そして、20代の多感な時期を「復興 の時代」と共に生きる皆さんにとっての何らかの参考になれれば幸いです。

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さて、それでは本題に入ります。

まず、こちらをご覧ください。こちらはJETROのホームページからの情報ですが、「企業が海外進出する際に考える様々な要因」をまとめてあります。

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海外進出の際の検討項目

この図を見ても分かるように、一口に「企業の海外進出」といっても、企業毎に様々な目的があります。 例えば、市場を開拓するということも目的の一つですし、生産コストの削減という目的から海外に進出される企業もあります。そして、企業はこれらの目的に合 致した進出国を選択し、実際に様々な事項を検討します。例えば市場の開拓を目指す会社は経済の成長率や物流事情に着目しますし、コストの削減を目指す会社 は人件費等の様々なコストを考慮することになります。

そしてこれらのコストの一つとして、「税務コスト」というものも検討項目の一つとなります。それでは「税務コスト」とはどのようなことを指すのでしょうか。

(税務コストを)イメージしやすいものとしては、企業が払う直接税である「法人税」が挙げられます。法人税 の高い国に進出するなら、どんなに人件費が安くて利益を創出したとしても、税金で沢山持ってかれてしまいます。ですから企業が海外進出する際に、現地での 法人税率がどの位かといったことは非常に大きな要因となります。

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税務コストを考える際、税率だけを注目すると、日本よりも法人税率が高い国には進出出来ないなとなる のですが、では日本よりも法人税率が高い国はどこだろうとなると、実はアメリカ位しかありません。このため、日本の大企業にとって殆どの国で法人税率が日 本よりは低いので、どんどん海外進出が加速し、その結果どんどん国内製造業の空洞化が進んでいるということになります。また外国企業側の立場で言うと、日 本のように法人税率が高い国には元々進出しずらいということになります。このような理由から、日本の経済団体である経団連などでは、日本の法人税率を下げ ろといった主張をすることになるのです。

ちなみに、日本の間接税である消費税はわずか5%と、こちらは世界でも屈指の低い税率となっています。このため、消費税に関しては上げるべきなのではないかといった議論が出てきています。

ここで、最近のニュースでこのような法人税や消費税の税率の問題がどのように報道されているかを見てみましょう。

(動画による紹介)

このように現在、日本では法人税の引き下げと、消費税の引き上げというテーマが議論されています。

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ところで、先ほど皆さんにアンケートをお願い致しました。その内容は、「法人税を下げるべきか」という質問 と、「消費税を上げるべきか」という質問でした。これらの質問に8割以上の方が「はい」と答えていました。では、「法人税を下げて、消費税を上げるべき だ」と考えている人が、国民全体ではさぞかし多いのではないかと思いがちですが、インターネット上の投票では全く逆の結果が出ています。

一橋大学セミナー 一橋大学セミナー 2011 07 01200 22 01一橋大学の生徒と逆の意見となったGooニュースでの結果

これはGooというインターネット上の投票サイトにて、法人税や消費税の税率についての投票結果です。

このグラフはGoo上での投票ですから厳密に言えば国民の世論ではありません。インターネットを駆使して投 票することから、若い人の方が多いのかもしれません。また、経団連のような大企業の人よりももしかしたら主婦のような人たちが回答しているのかもしれませ ん。とはいえ、それなりの数を集めていますから、このグラフでは国民の世論をある程度表わしているのかもしれません。

だとしたら、ここにいらっしゃる皆様方の考え方とは全然異なっていることになります。

ここで、皆さんの意見を伺いたいのですが、先ほど「法人税率を下げて、消費税率を上げた方が良い」という回答を頂いた方は8割程おりましたが、どなたかご意見はありますか?

はい、じゃあ、そこの方、お願いします。

学生:はい、僕は法人税率を下げて消費税を上げる方が良いと思います。

淵上:どうして?消費税が高くなると、何を買うにも高くなっちゃうよ?

学生:ええ、それでも良いと思います。日本は財政難なので、税収を増やしていかないといけませんから。

淵上:確かにそうですね。

学生:それに、消費税であれば、万人から平等に税を集めることが出来るから、良いと思います。

淵上:有難うございました。

それでは、逆に、法人税率も消費税率も今のままが良いと思う方は2割程おりましたが、どなたかご意見はありますか?

はい、じゃあ、そこの方、お願いします。

学生:僕は税金のことを論じる前に、まずは無駄を削減することが大事だと思っています。

淵上:じゃあ、無駄が削減できた後には、法人税を下げて消費税を上げても良いっていうことですか?

学生:ええ、前提が整えば、方向性としては法人税を下げて外国の企業をどんどん誘致すべきだと思います。

淵上:分かりました。有難うございました。

今回、一橋大学の皆さんの意見を聞いたところ、8割の学生が法人税を下げて消費税を上げるべきという意見で したが、インターネットの結果は逆でした。とはいえ、日本では前例主義的なところがありますから、本当は皆さんのように「法人税を下げて、消費税を上げる 意見」に賛成していても、そう簡単に意見表明してもらえないのかもしれません。まあ確かに税金は自分の財布事情に跳ね返ってくるので、そうそう簡単に変化 を望む人は少ないのかもしれません。

尚、現在の世界の法人税と間接税の税率の年次毎の比較を見てみます。この表から、微妙ではあるのですが、全 世界平均では毎年少しずつ法人税率が下がってきています。反面、間接税はこの図で見るとほぼ一直線ではありますが、過去と比べると着実に間接税の税率は上 がってきています。このことから、今までは法人税や所得税等の直接税を中心としたタックスプランニングを行っていた大企業が、間接税のタックスプランニン グやコンプライアンス政策を考えるようになってきたと思います。

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また、この次のグラフで分かるように、各国の税収に占める付加価値税(VAT)の割合は非常に大きな ものがあります。日本やカナダといった国はこの中でも最低クラスですが、OECD加盟国のうち27カ国は10%以上の割合、また11カ国は20%をも超え ています。特に欧州の税務当局は問題を発見しやすい付加価値税(VAT)を近年のターゲットとしているようです。

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それではここからは僕の専門分野のお話になりますが、海外の間接税、とりわけ欧州の付加価値税について、日本の企業が課税漏れしやすいいくつかの事例をお話させて頂きます。

その最たる理由として、日本企業があまり詳しくない税金だから、ということです。あまり詳しくないために、 適正な間接税プランニングを怠ってしまい課税漏れが発生してしまうのです。そして、前述したように、欧州の税務当局は問題を発見しやすい付加価値税 (VAT)をターゲットにしています。よって、突然欧州の税務当局から納税の通知が送られてくるのです。

さて、付加価値税という税金について改めて説明致しますと、簡単に言えば日本の消費税と同じような税金で す。物やサービスを購入する時に掛ってきます。そして、ヨーロッパでは大体20%位の税率になっています。また、この付加価値税ですが、欧州域内で非常に 高度に制度化されております。

そして、日本の企業の中には、たとえグローバル企業であっても、欧州の付加価値税についてはあまり詳しくなかったり、あるいは納税義務があるにも関わらず無視しているような企業が多くあります。今からいくつか事例を述べさせていただきます。

一橋大学セミナー 一橋大学セミナー 2011 07 012017 28 37まず例えば消費者通信販売のケースが考えられます。イメージとしては、ニッセンとかドモホルンリンクルの通販といったケースですね。

ニッセンのカタログを見て誰か個人の人が、日本で洋服を注文したら、日本の消費税が掛りますよね?それと同様にヨーロッパの個人の人が、通販で洋服を買ったら、現地の付加価値税が掛ることになるんですよね。フランスの人がフランスで買うとしたらフランスの 19.6%のVATが掛りますし、ドイツの人がドイツで買うとしたらドイツの19%のVATが掛ります。

その場合、この図のAはたとえ日本の企業であろうとも、EU域内で税務登録をして、現地のVATを徴収し、 現地で納税を行う義務があります。ところで、そうなると、ニッセンのようなケースではEU域内27カ国全ての国で税務登録・税務申告をしなければいけない ということですが、そこは例外規定がありますので必ずしもその必要はありません。

一橋大学セミナー 一橋大学セミナー 2011 07 012017 31 38ま た、次のケースをご紹介します。このケースでは、日本のある業者が電子的なデータをEU域内の個人に対して販売しているとします。具体的にはソフトウェア とか、iPhoneのアプリ、音楽や動画、その他のクラウドのサービス、その他インターネット上のホームページやゲームの販売、サーバの使用料等がこれに あたります。

このケースでも先ほどのケースと同様、現地で税務登録をして、現地のVATを徴収し、現地で納税を行う義務があります。インターネットのゲームや電子ブック、音楽の販売をEU域内の個人に提供するような会社は、非常に多いと思いますので、注意が必要です。

一橋大学セミナー 一橋大学セミナー 2011 07 012018 01 47最 後に、物品の供給というケースをご紹介します。例えば日本のAという会社が日本のBという会社とEU域内での物品供給契約を締結したとします。この時、A は提携先であるCという会社に生産指示を出して、Bの指定するD社に物品を納入させたとします。このような場合、たとえ日本のA社とB社の間の契約書が日 本語で書かれてあったとしても、またたとえ取引通貨が日本円であったとしても、この取引自体がこのEUの国内での課税取引となります。よって、A社はB社 に対してEUのVATを課税した請求書(インボイス)を発行する必要があり、また徴収したVATはきちんとEU域内で納めなければいけません。

このようなケースは特に商社や製造業者で見られるスキームなのですが、このような税法を無視して、あるいは 知っていても知らないふりをして行う会社が結構あります。なかには、ヨーロッパの会社がこう言っているんだから間違いないとか、大手の商社や物流会社が税 金は払うなと言っているから問題無いという経営者も結構見てきました。

ところがこのような場合でも、結局ばれるものはばれてしまうんですよね。僕が実際に過去に見てきたケースで も、過去数年分の経済活動に対してまとめて付加価値税を払えと言う要求がされたケースもありました。このような場合、今さらお客さんから20%以上もする 付加価値税を徴収するわけにもいかず、また多くの延滞税が掛っていたりもして、社内だけでなく取引先も含めて非常に揉める場合があるんですよね。ですか ら、実際に弊社に案件が持ち込まれるときには、問題が大きくなっている場合が多いんですよね。

一橋大学セミナー 一橋大学セミナー CIMG5421問 題が発生してから何とかするのが弊社の役割でもあり、ノウハウを蓄積している部分でもあるのですが、やっぱり問題が発生してからいろいろと対応するのも大 変なんですよね。また、コンプライアンスを重視する企業であればある程このような問題は致命傷になるため、弊社ではお客様が欧州域内で何らかの取引をする 前にまずは事前に課税活動を無料でチェックしますということを実施しています。最近では弊社のクライアントでは、多くの会社がきちんと欧州での税務登録を 行っていますので、弊社としてもいろいろとサポートをしたりしています。

このように、今回は欧州の付加価値税という外国の間接税での話でしたが、外国の間接税であろうと、現地での課税要件を満たしているのなら、たとえ外国の企業であろうとも現地で税金を納めなければいけません。

ですからグローバルなビジネスの中で生きる企業は、どこの国で税金が掛っているのかということを絶えず気にする必要があります。

ところで、皆さんのお手元にいくつか資料が行っていると思います。(資料はこちら

これは、所得税や法人税のような直接税に関する様々な新聞記事となっています。例えば、ハリーポッターケースですとか、武富士ケース、その他移転価格税制の説明というのも書いてあります。

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移転価格税制とは、独立企業間で取引される価格と異なる価格で関連者と取引が行われた場合に、その取引価格が独立企業間価格で行われたものとして課税所得金額を算定する税制です。関連者とは子会社とかのように、資本や人的に支配関係にある外国会社ということです。

上記の例の場合、上の図と下の図がありますが、上の図ではアメリカの他の会社にモノを販売する金額よりも安 く、子会社に物品を販売しています。こうなると他の会社と同じだけモノが売れたとすると、この子会社は他の会社よりも儲けが増えることになります。こうな ると日本の親会社はアメリカの子会社に通常よりも安くモノを卸し、アメリカの子会社の儲けが増えるのですから、「利益を移転しているのではないか」という 指摘がなされることになります。

また、この逆のパターンが下の図です。この場合だと、他の企業に対してより、高い金額でモノを販売することにより、日本国内に利益を貯めすぎているのではないかと指摘されることになります。

このようなパターンになると、日本とアメリカの税務当局の間で協議する相互協議や異議申し立てといった解決手段が行われることになります。つまり、税金の行方を相互協議するなどして、税金の争奪戦、すなわち「綱引き合戦」が行われます。

企業活動がグローバルになればなるほど税の争奪戦が発生します。そして、国際的な税の争奪戦の前では、ある 国で税金を払ったからといって、別の国で払わなければいけない場合、別の国での税が免除されるわけではありません。ですから、海外とビジネスを行う際に は、前述の通り、絶えずどの国の税金が掛っているかを事前に考える必要があるのです。

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今日は、日系企業が海外進出をする際、どのような目的をもって進出していくのかといったことを説明致しまし た。そして、税務コストという点も検討材料の一つであること、そして日本では法人税が高く消費税が低いので、現在日本では法人税を下げて消費税を上げると 言う議論があることを学び、また皆さんの意見も聞かせて頂きました。

そして、国際税務の面からは、企業のグローバルな経済活動に伴い、様々な税が課せられ、いわば税の争奪戦が行われているといった話をさせて頂きました。

ここで最後のスライドになりますが、ご覧くださいませ。出典は経済産業省の「海外事業活動基本情報調査」となります。

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これをご覧になってお分かりになる様に、ここまで税金関係の説明をしておいて言うのもなんですが、企 業の海外進出の判断材料として、税制とか融資というのは5%程とあまり大きなポイントではありません。しかしだからといって、無視することも出来ない項目 でもあります。なぜなら税金もコストですし、商流や物流を組み替えるだけで払うべきであった税金を払わないようなスキームに変えることも出来るからです。

今回、税金について、あくまでも税率に注目してお話をしておりましたが、実際の税の徴収については目に見え ないことも沢山あります。例えば、アジアの発展途上国などでは付加価値税を納めすぎたから返してくださいという請求をすると、付加価値税を返却する際にそ の半分位を賄賂として要求されたり、あるいはそれ以外の税を逆に追求されたり、または何年も返してくれなかったりと言ったことがあります。ですから、実際 の海外進出を考える際は数字や外からの見た目だけでなく、実際の現地事情を学ぶ必要もあります。企業が海外進出を考える場合は、そういったことも含めて、 検討しなければいけないのです。

冒頭でも申し上げましたが、震災の影響もあり、製造業も非製造業もより一層の海外進出が加速することでしょう。

そのようなグローバルな経済活動下で、考えなければいけない国際税務のポイントや海外進出要因等を今回はお話させて頂きました。

この「復興の10年」、皆さんが僕らと共に日本を支えていかなければいけません。是非一緒に頑張りましょう。

本日は皆様、どうも有り難うございました。

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今回、一橋大学の学生さんといろいろと意見の交換をさせて頂きました。皆さん、有難うございました。

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それこそ、この紙面で書ききれなかった質問、例えば「大学生活をどのように送るか」とか「女性の社会進出」といったテーマなどについてもいろいろとお話させて頂きました。

学生さんからは、「とても面白かったです」「学生生活を送る上でとても参考になりました」というお言葉を頂き、また、一橋大学教職員の方々からも、「普段の授業と異なる外部の方の意見に生徒も非常に興味を示して頂きました」とのお言葉を頂きました。

私自身も、学生さんからの様々な意見を頂き、若い人の感性の鋭さに非常に驚かされました。特に、「海外で働 く」ということがあまり当たり前で無かった時代に社会に出た人間から見れば、今の学生さんは「海外とのビジネス」「英語でのビジネス」が当たり前と捉えて いるところに隔世の感を感じると共に、頼もしさを感じました。私自身も今回のスピーチを通じて、多くのことを勉強することが出来ました。

改めて、この度は一橋大学の学生さん、有難うございました。

また一橋大学様におかれましても、この度はこのような機会をご提供頂きまして深謝申し上げます。

末筆ながら学生諸君のご多幸と発展を心より祈念申し上げます。

2011年6月1日

オプティ株式会社

代表取締役

淵上 暁