欧州付加価値税とは

Contents

目次

1. 欧州付加価値税の概要

(ア) 基本事項

【事例A】前段階税額控除

(イ) 納税義務者
(ウ) 課税対象

【事例B】資産の譲渡
【事例C】EU域内取得
【事例D】FOBによる日本からEU域内への輸出
【事例E】DDPによる日本からEU域内への輸出

(エ) 課税地

【事例E】同一国での物品販売の課税地
【事例F】日本企業によるEU域内での物品販売の課税地
【事例G】EU内企業からEU内企業への直送手配の課税地
【事例H】英国の弁護士Aとイタリアの会社Bのケース
【事例I】英国の弁護士Aとイタリアの個人Cのケース

(オ) 非課税取引

【事例J】ポルトガルの会社Aから日本の会社Bへの輸出

(カ) 付加価値税番号登録・付加価値税申告

【事例K】 コンプライアンス違反の例(物流会社編)

(キ) 非居住者に対する付加価値税還付

【事例L】輸出入時に掛かる税務コスト削減

はじめに

昨今、日本国内の厳しい投資環境を揶揄して「六重苦」と呼ばれるようになりました。このような厳しい投資環境を嫌い、あるいはグローバル市場での利益創出を狙い、様々な企業が海外企業とビジネスを行い、その数は年々増加傾向にあります。日本企業が海外において、または海外企業とビジネスを行う場合、マーケティング面や物流面など、様々な側面をチェックした後にビジネスを開始されることでしょう。同様に各国毎の法務上・税務上の規制などに対しても十分に検討されていることでしょう。

しかしこの点、欧州の消費税である欧州付加価値税(Value Added Tax :略称 VAT)については、欧州各国の税務当局が情報を積極的に提供しているにも関わらず、十分に検討されずにビジネスを開始されている会社が多くように感じられます。

この理由の一つとして、欧州付加価値税法に精通した専門家が国内では少ないため、企業の税務部といえども、欧州付加価値税に関するコンプライアンスやタックスプランニングについてきちんとした知識がないということが挙げられます。

また、「VAT還付」制度(後述)についてはよく知っている企業でも、現地でVAT登録やそれに付随する税務申告をしなければいけないケースについてあまり考えていないように感じられます。欧州の付加価値税は、現地の課税要件を満たした場合、たとえ外国企業による物品や役務の提供であっても現地の付加価値税を徴収し各国の税務署に対して税を納付する義務があります。またたとえ日本企業同士の売買取引であっても、現地の課税要件を満たした場合、現地企業同様の納税義務が発生します。

もしかしたら、地理的に欧州とは離れていることや、単に申告義務を無視しても税務当局より発見されていないことにより現地の法令を厳格に遵守しなくても大きな影響を受けないのではないかと考えている企業もあるのかも知れません。これについては、当社をはじめ、還付代行業者や大手税理士法人が、日本企業に対して啓蒙すべき点なのだと思います。
いずれにせよ、欧州との関わりをもって活躍する各企業は欧州付加価値税に関する必要最低限の知識を持つ必要があります。

昨今、欧州税務当局はEU域外の企業による欧州での課税活動に関して厳しく取り締まるようになってきています。この背景として、①欧州付加価値税はインボイスなどの「形式」を重視する税であるので税の未納付やコンプライアンス違反を容易に発見されることが多いこと、②各国の税収割合(直間比率)が世界的に「直接税」から「間接税」へシフトしていること、といった理由の他にも、③2010年1月から施行された新しいVATの取り決め(VATパッケージ)の影響から外国企業の課税活動にも着目されるようになったことがその理由として挙げられます。

このような傾向を受け、過去の自社の取引について欧州税務当局から突然課税漏れの指摘を受け、税申告の要求を受けている日本企業が多くなってきています。当社においても、各国の税務当局との交渉を依頼される企業やその対応策に追われるケースが最近特に多くなってきています。

そこでこの『欧州付加価値税ガイドブック』では、日本企業が通常盲点となりがちな欧州付加価値税の仕組みや事例を説明し、貴社の欧州ビジネスの際の事前検討に役立てて頂ければと考えております。

当ガイドブックにより、皆様の欧州付加価値税に対する理解が深まり、欧州取引時の法令順守少しでも寄与することによって貴社の欧州ビジネスの御発展に貢献できれば幸いです。

オプティ株式会社

1. 欧州付加価値税の概要

(ア) 基本事項 

2011年9月現在、EUに加盟している国は28カ国(2016年6月1日現在)あり、加盟国それぞれに略称があります。そしてこれらの加盟国では共通のVAT制度を採用しています。税率やリバースチャージの適用範囲など、加盟国毎で異なる項目はありますが、大筋の部分では同じ制度ということになります。(参考資料1表にて詳述)

欧州地域の付加価値税料率一覧

スライド1

上図:欧州付加価値税還付可否表

 

現在、欧州付加価値税の名称はValue Added Tax (略称VAT)のみならず、TVAやIVA等、各加盟国毎に略称があります。税率も15%から25%と加盟国毎に異なります。欧州付加価値税制度は、理事会指令2006/112と呼ばれるEU指令を中心として様々な項目が規定されています。
(当ガイドブック上での条文名は当該指令を指すこととします。)

① 前段階税額控除 

欧州付加価値税の制度では前段階控除という制度が用いられています。日本の消費税同様、「仕入に掛かった税」と「売上の際に徴収した税」を相殺し、その結果、売上の際に徴収した税が多い場合、該当する加盟国の税務署に(付加価値)税を納付します。反対に、仕入に掛かった税(支払った税)が多い場合、該当する加盟国の税務署から還付します。この制度を前段階税額控除制度と言います。

【事例A】前段階税額控除
英国の企業Aは携帯電話を英国内で英国の個人に対して200£で販売した。この英国企業Aは携帯電話を英国内のB社から100£で仕入れた。英国での税率は20%であるため、販売時に徴収した40£と仕入れ時に掛かった20£は相殺できる。このため、当該英国企業Aが英国税務当局に対して支払うべき、付加価値税は20£となる。

(イ) 納税義務者 

納税義務者とは資産の譲渡または役務の提供を行う課税事業者です。
課税事業者は、営む場所、目的、結果を問わず、独立して経済活動を営むものを指し、
経済活動とは、鉱業、農業、専門的サービスを含む、製造、商品販売、サービス提供に含まれる全ての活動を指し、収入を得るために継続的に有形または無形資産を利用することを指します。

① 課税事業者 

製造業や商社、金融機関など多くの会社は全て課税事業者に該当します。課税事業者にも、「課税取引」のみを行う会社と「非課税取引」のみを行う会社とに分類できます。「課税取引」の代表としては、製造業や商社等での物品の販売等の商行為が挙げられます。「非課税取引」の代表として、金融機関や福祉・保健関連、教育関連の企業や組織による物品販売や役務提供が挙げられます。(非課税取引)

1. 小規模事業者の特別措置
特例として、小規模事業者の特別措置(281条~292条)という特別制度があります。各加盟国では、売上が一定金額に満たない事業者を「小規模事業者」とみなし、これらの事業者による取引を課税対象外とすることが出来ます。ただしこの小規模事業者の特別措置制度は、EU在住企業に対してのみの適用となります。つまり、EU域内で課税対象取引を行う日本企業は、たとえ売上の規模が小さくても小規模事業者の特別措置制度を利用することは出来ないので、各加盟国で付加価値税登録を行う必要があります。

2. リバースチャージ制度
EUでは、リバースチャージ制度という制度があります。通常、課税売上を計上する資産の販売者や役務の提供者は、販売先に対して付加価値税を課税・徴収し、これを税務署に税納付しなければなりません。リバースチャージ制度は、納税義務は資産や役務の提供者から、資産の取得者または役務の受益者に転嫁される制度を指します。
尚、リバースチャージ制度を利用する際には、リバースチャージが適用される旨、及びその根拠条文をインボイス上に記載する必要があります。(リバースチャージ制度については後ほど詳述)

② 課税対象外法人

研究究機関や非営利法人等、課税事業者では無い法人はこれに該当します。本来的に事業を営んでいない点で、金融機関や介護施設のように、非課税売上によって収入を得る法人とも異なります。

③ 最終消費者

一般の個人のことです。

(ウ) 課税対象 

欧州付加価値税法の課税対象は、「資産の譲渡」、「役務の提供」、「EU域内取得」、「輸入」です。課税事業者がEU域内で事業として有償で行うものがその対象となります。

① 資産の譲渡

 「資産の譲渡」とは、有形資産の処分権を移転することです。
「資産の譲渡」とは、モノの販売です。モノを輸出することはこれに該当しません。よって、日本の会社Aから、ドイツの会社Bに対して、日本にある自社で所有権を有する機械を輸出することは資産の譲渡に該当せず、ドイツの付加価値税は課税されません。(ただし、据付工事などが含まれている場合、課税対象と見なされる場合もあります。)

【事例B】資産の譲渡
日本の会社Aがドイツの会社Bに対して機械設備を納入する際、別のドイツの会社Cの保有する機械を購入し、当該機械の処分権を取得した後にBへ販売した。この場合、日本の会社Aはドイツにて資産の譲渡が行ったこととなり、AはドイツにてVAT番号を取得する必要がある。また、AB間のインボイス上では、ドイツのVATを請求する必要がある。
(加盟国によっては、上記の通りで無いこともあります)

② 役務の提供

 「役務の提供」とは、資産の譲渡以外のものを指します。役務の提供とはサービスを提供することです。これには、無形資産の譲渡や貸付も含みます。例として、機械設備の修理や設置、散髪、芸能人の興行、コンサルティング等とイメージしてください。役務の提供の場合、課税地の判断が重要です。

③ EU域内取得

 「EU域内取得」とは、有形動産の処分権の獲得であり、当該資産がある加盟国から他の加盟国に移動することです。供給者または取得者、あるいはこれらのものから委任を受けたものによる輸送によって、資産が取得者に輸送される場合にEU域内取得であると認められます。
尚、EU域内取得の「域内」とは、EU27カ国という意味です。欧州付加価値税法では、EU27カ国のことをthe Community(域内)、それ以外の国のことをthird territories(第三国)と呼びます。EU域内取得とは、加盟国間の物品の移動を指します。例として、英国の会社Aが他のEU加盟国であるドイツの会社Bより機械を購入する場合がこれに当たります。(尚、EU域内取得と異なる概念として「輸入」があります。輸入は、加盟国以外の第三国から資産をEU域内に持ち込むことを指します。)

EU域内取得はEU域内納品とセットになっています。上記の例では英国の会社A社がドイツの会社B社から物品を取得することは「EU域内取得」となり、B社からA社への納品は「EU域内納品」となります。EU域内納品は輸出同様、免税取引となります。EU域内取得は取得側(この場合英国の会社A社)は仕向地(この場合英国)の税率にてEU域内取得の税額を計算し申告し、申告書にて同額を前段階税額控除します。

【事例C】EU域内取得
英国の企業Aから機械設備をドイツの企業Bが購入する。この場合、取得側のドイツ企業からは、これをEU域内取得と呼ぶ。納品側英国の企業AからはこれをEU域内納品と呼ぶ。EU域内納品は免税取引のため付加価値税が課税されない。反面、EU域内取得側で課税されるため、取得側は域内取得の税額を計算して申告する義務が発生する。EU域内取得を行う企業は、現地にてVAT登録を行う必要がある。

④ 輸入

 「輸入」とは、第三国(EU域外)から資産をEU域内に物理的に持ち込むことです。輸入者が課税事業者であるか、課税対象外法人であるか、最終消費者であるかは問われず、また売買によるものである必要性もありません。欧州付加価値税法上、輸入時のインコタームズによって、その対応方法が異なりますので注意が必要です。

【事例D】FOBによる日本からEU域内への輸出
日本企業が欧州域内に対してFOBで輸出を行う場合、輸入通関時の付加価値税は荷送人である当該日本企業が支払わない。このため、日本企業は欧州での付加価値税登録を行う義務はない。
【事例E】DDPによる日本からEU域内への輸出
日本企業が欧州域内に対しDDP条件で輸出を行うということは、輸入時の付加価値税を自社が払うことになる。輸入は課税要件の一つであるため、日本企業は輸入時の付加価値税を支払った加盟国において、付加価値税登録を行う義務がある。また、加盟国内の物品供給においても買主に対して付加価値税を課税しなければならない。

参考URL ジェトロ http://www.jetro.go.jp/world/europe/eu/qa/01/04O-110801

(エ) 課税地 

欧州付加価値税法では、課税地の判断は非常に重要なポイントです。「課税地」とは、付加価値税が課税される国(加盟国)を指します。日本の消費税法では、内外判定、つまり、国内(日本)で消費税が掛るのか、国外(外国)で消費税が掛かるのかと2通りの判定しかありません。この点、欧州付加価値税法の課税地は、加盟国の数である27通り、及び貴社の所在地である日本も含めると28通りの選択肢があります。このため、課税地の判断は2通りの消費税と比べて複雑であると言えます。課税地の判断を誤ると、たとえ法令順守を意識した取組を行ったつもりでも、それらの取組を根底から無効化してしまいます。

例として挙げると、本来貴社がイタリアの付加価値税を課税しなければならない場合で、間違ってドイツの付加価値税を顧客に課税して、この付加価値税をドイツの税務署に納付したとします。たとえこの場合でも、イタリアの税務署は貴社に対して付加価値税の納付を求めてくるばかりか、納付の遅延による様々な罰金が科せられる可能性もあります。貴社がドイツの税務署に対して付加価値税を納付したことは考慮されません。
このように課税地の判断は非常に重要となります。課税地はその取組内容毎に異なりますので、注意してください。

① 課税地判断~資産の譲渡

資産の譲渡の課税地は、資産の移動が無い場合、「資産の譲渡が行われた場所」となります。また、資産の移動があった場合は、「資産の移動が開始された場所」となります。

1. 【事例F】同一国での物品販売の課税地
ドイツ国内で、ドイツの会社Aがドイツの会社Bに対して物品を販売した。
→課税地はドイツ

2. 【事例G】日本企業によるEU域内での物品販売の課税地
ドイツ国内で、日本の会社Aがドイツの会社Bに対して物品を販売した。
→課税地はドイツ

3. 【事例H】EU内企業からEU内企業への直送手配の課税地
日本の会社Aが、ドイツの会社Cの在庫を購入して、ドイツの会社Bに対して物品を販売した。物品はCからBに直送するものとする。
→課税地はドイツ

上記の事例3点はどれも課税地がドイツとなっています。特筆すべきは事例3のようにEU域外企業であっても、EU域内で物品を購入し、それを直送する場合、資産の譲渡にあたるということです。事例2及び事例3のケースでは、日本企業による取引の課税地はドイツとなりました。このため、当該日本企業は、ドイツにて付加価値税番号登録を行い、ドイツにて付加価値税を申告し、税を納付する義務があります。

② 課税地判断~役務の提供

役務の提供の課税地は、事業者間での役務提供の場合は、受益者が事業を営む国が課税地となります。最終消費者に対する役務提供の場合は、役務の提供者が事業を営む国が課税地となります。

【事例I】英国の弁護士Aとイタリアの会社Bのケース
英国の弁護士Aがイタリアの会社Bに対してコンサルティングサービスを行った。
→事業者間での役務提供は、受益者が事業を営む国が課税地となるので、課税地はイタリアである。

【事例J】英国の弁護士Aとイタリアの個人Cのケース
英国の弁護士Aがイタリアの個人Cに対してコンサルティングサービスを行った。
→最終消費者に対する役務提供の場合は、役務の提供者が事業を営む国が課税地となるので、課税地は英国である。

③ 課税地判断~EU域内取得

EU域内取得の課税地は、輸送の終了時に資産が所在する国となります。

④ 課税地判断~輸入

輸入の課税地は資産がEU域内に持ち込まれた時点で所在する国となります。例外として、資産が保税手続きに置かれる場合には、保税手続きが終了した時点で資産が所在する国がその課税地となります。

⑤ リバースチャージ制度 

課税地となる加盟国にて拠点を有していない事業者による、物品や役務の提供等のサービスについてはリバースチャージ制度の適用を受けます。本来、物品や役務の提供者は受益者に対して付加価値税を課税・徴収し、徴収した税は提供者により各加盟国の税務署に納付されます。この点、リバースチャージ制度は、納税義務を提供者から受益者に移す制度です。
この制度の趣旨として、上に述べた【事例I】のケースのように、英国の弁護士がイタリアの会社に対してコンサルティングサービスを行った場合、課税地がイタリアになり、この英国の弁護士はイタリアでも付加価値税登録をしなければならなくなります。もし欧州全域に法人の顧客を有する弁護士である場合、27カ国で付加価値税登録を行う必要が出てきます。このような事態を避けるため、欧州付加価値税法上では、リバースチャージという「納税義務を転嫁する」制度があります。納税義務を転嫁するため、ある加盟国で付加価値税番号を取得していたら、各加盟国で付加価値税番号を登録する必要が無くなります。
リバースチャージ制度を適用するサービスについては、コンサルティングサービスや、広告、著作権の譲渡、人材の派遣、外国企業による資産の譲渡等が該当します。リバースチャージ制度の適用範囲は加盟国によって大きく異なりますので、注意が必要です。

(オ) 非課税取引 

非課税取引とは、「付加価値税が課税されない取引」となります。非課税取引には大別して2種類に分類することができます。それは「前段階税額控除が認められる非課税取引」と「前段階税額控除が認められない非課税取引」となります。(前段階税額控除)

① 前段階税額控除が認められる非課税取引

前段階税額控除が認められる非課税取引のことを、別名「免税取引」といいます。輸出やEU域内非課税納品がこれに該当します。

【事例K】ポルトガルの会社Aから日本の会社Bへの輸出
ポルトガルの会社Aは日本の会社Bに対して機械設備(100万ドル)を輸出した。
→輸出は非課税取引(免税取引)なので、日本の会社Bは欧州付加価値税を支払う必要が無い。輸出は前段階税額控除が認められるので、ポルトガルの会社Aは、機械設備の購入代金に掛った前段階の付加価値税を控除することが出来る。

② 前段階税額控除が認められない非課税取引

前段階税額控除が認められない非課税取引は大別すると、公共の利益に関するものと金融取引、不動産取引に関するものがあります。

1. 公共の利益に関するもの
(ア) 公共郵便
(イ) 医療行為
(ウ) 福祉施設での役務の提供
(エ) 授業料
(オ) 宗教団体による活動、など
2. 金融取引、不動産取引
(ア) 保険
(イ) 金銭貸付
(ウ) 土地の譲渡
(エ) 土地の賃貸、など

(カ) 付加価値税番号登録・付加価値税申告 

① 付加価値税番号登録

「付加価値税番号登録」とは、付加価値税の番号を登録することです。別の言い方では「付加価値税番号の取得」「VATナンバーの取得」と言います。欧州域内で課税対象となる経済活動を行った場合、日本企業であろうとも欧州での付加価値税番号を取得する義務があります。
付加価値税番号を取得すべき加盟国は、その経済活動の課税地となります。よって、ある加盟国において付加価値税番号を取得していたとしても、別の加盟国にて課税対象となる経済活動を行った場合、別の加盟国でも付加価値税番号を取得する必要があります。(但し、取引形態やその条件により、付加価値税番号を取得しない方法もあります。)

*参考:弊社付加価値税番号登録サービス

② 付加価値税申告 

 「付加価値税申告」とは、付加価値税番号を取得後、該当する加盟国の税務署に付加価値税の税額を申告することです。別の言い方では「税務申告」「VAT申告」「VATコンプライアンス」等と呼ばれます。
前述の通り、欧州付加価値税の制度では前段階控除という制度が用いられており、「仕入に掛かった税」と「売上の際に徴収した税」を相殺します。売上の際に徴収した税が多い場合、該当する加盟国の税務署に税を納付します。この時に、付加価値税申告書類によって、納付する税額を申告する必要があります。反対に、仕入に掛かった税(支払った税)が多い場合、該当する加盟国の税務署から還付します。この場合でも同様に、付加価値税申告書類によって、還付請求する税額を申告する必要があります。これらの申告のことを付加価値税申告と言います。
尚、付加価値税申告の期間は、加盟国によっても異なりますし、課税対象となる経済活動の金額によっても異なります。概ね1ヵ月毎か3ヶ月毎の申告となります。

*参考:弊社付加価値税申告サービス

③ インボイスの発行

欧州付加価値税法上、インボイス(請求書)は現金と同様の重要性を持ちます。インボイスには、記載すべき事項を全て記す必要があります。記載すべき事項を記載せず、税務当局が発行されたインボイスが正式なインボイスと認めらない場合、これらのインボイスを受領した会社では、前段階の付加価値税控除が認められないという大きな問題を抱えてしまいます。よって、インボイス上に記載すべき事項は必ず事前に調査しておく必要があります。また、インボイスを修正する場合、最初に発行したインボイスが無効となることを明らかにしない限り、全てのインボイスに表示されたVATの納付義務が発生します。このように欧州付加価値税法では、インボイス等の取扱いが非常に大きな意味を持ちます。

【インボイスに記載すべき事項】としては下記の項目があります。
(ア) 請求書を発行した年月日
(イ) 請求書を特定するための番号
(ウ) 売主の付加価値税番号(VATナンバー)
(エ) (EU域内取得の場合)顧客の付加価値税番号
(オ) 売主及び買主の社名及び住所
(カ) 販売する資産の名称、数量、金額、または役務提供の場合役務提供の範囲
(キ) 資産の譲渡または役務の提供の日付(請求書の発行日と同日で無い場合)
または、前受け金を受領した日
(ク) 適用税率、非課税売上及び課税売上の区分、課税標準、単価、値引き額
(ケ) 付加価値税額
(コ) 非課税取引やリバースチャージの場合、その根拠条文の引用
(サ) 税務代理人がいる場合は、税務代理人の社名、住所、付加価値税番号
(シ) その他Terms of Deliveryの記載
その他、インボイスに記載すべき事項は加盟国によってさらに追加しなければならない項目があります。

【事例L】 コンプライアンス違反の例(物流会社編)
日本企業A社は、英国での物流拠点として日系の物流会社B社を利用している。日系の物流会社B社は、英国での倉庫内の作業や物品の保管料として英国の付加価値税20%を課税している。尚、A社は英国での付加価値税番号を取得し、B社は付加価値税番号を取得していない。この場合、B社が課税した英国付加価値税をA社は控除することが出来るか。
→上記の例では、日系の物流会社B社は英国でVAT登録していないにも関わらず、日本企業A社に対して英国の付加価値税を課税しています。日本企業A社が税務申告上、前段階の付加価値税を控除するためには、インボイスの形式が欧州付加価値税法に則ったものである必要があります。本件では、本来的にはB社は英国にて付加価値税登録を行ったうえで、英国の付加価値税を課税する必要性がありました。付加価値税番号を取得すらしていないB社により英国の付加価値税が課されたA社は、この付加価値税を前段階控除することが出来なくなります。
(尚、本件で、B社は英国より付加価値税番号取得漏れを指摘され、罰金及び過去の取引で得たとされる全ての付加価値税額の支払い命令を受ける可能性があります)

(キ) 付加価値税還付   

付 加価値税還付は、日本企業にとって欧州付加価値税制度の中で、もっともよく知られた制度です。別名、「VAT還付」「VATリファンド」とも言います。 EUで課税活動を行っていない日本法人が、その事業を行う上で支出した欧州付加価値税は、付加価値税還付申請によって、支払った付加価値税を各加盟国の税 務署から全て還付する(戻してもらう)ことが出来ます。これが非居住者に対する付加価値税還付制度です。
適用される品目の例としては、出張時のホテル代、タクシー代、レンタカー代、レストラン代等の他、駐在員事務所の経費など様々な経費が該当します。非居住 者に対する付加価値税還付では、その対象が「欧州で課税対象活動を行っていない欧州以外の法人」が対象となりますので、欧州で課税対象活動を行っている日 本企業は、付加価値税申告上の付加価値税還付を利用する必要があります。

 【事例L】輸出入に掛かる税務コストの削減
日本の会社Aがドイツの会社Bに対して機械設備を納入する際、物流会社より通関時の輸入付加価値税及び関税の支払いを求められた。機械設備代がおよそ1億円であったので、これらのコストは2000万円近いコストになった。
→これらの税務コストは当社独自で開発したソリューションでほぼ全額の税務コストを戻すことが可能です。但し、物流会社からは提案されないはずなので、ご注意ください。

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2. 最後に

企業活動のグローバル化により、各地域における様々な法制度・税制度を理解し、活用していくことがより重要になってきています。なかでも、拡大傾向の続くEUという地域性、直接税から間接税への世界的な税収シフトの傾向、そしてEU各国の課税権の強化といった理由から、グローバルな経済活動を行う日本企業にとって、欧州付加価値税制度はますます重要な制度になってきていると言えるでしょう。当ガイドブックが欧州付加価値税に関する意識を高め、日系企業の欧州戦略の一助になれば幸いです。