Skip to content
Aki Fuchigami24/09/05 22:35< 1 min read

電子インボイス制度導入の必要性:購買部門と営業部門が理解すべき理由

電子インボイス制度導入の必要性:購買部門と営業部門が理解すべき理由
6:14
電子インボイス制度導入の必要性:購買部門と営業部門が理解すべき理由
6:14

 

グローバルに展開する日本企業にとって、電子インボイスの対応は、もはや避けて通れない課題です。特に、EUやマレーシアをはじめとする国々で電子インボイスが義務化されつつあり、購買部門や営業部門がこれを正確に理解し対応しないと、ビジネスの競争力が低下するリスクが高まっています。今回は、電子インボイス導入の重要性と、それに対応しない場合のリスクについて解説し、購買部門と営業部門の役割を考察します。

1. 電子インボイスのグローバルな広がり

欧州連合(EU)は「VAT in the Digital Age(ViDA)」と呼ばれる大規模なVAT改革を進めており、特に電子インボイスの義務化が注目されています。この改革の一環として、EU加盟国内での取引はすべて電子インボイスを使用することが求められ、紙ベースの請求書は廃止されます。これにより、税務当局は取引をリアルタイムで監視でき、税務詐欺を防止することが目的です。

また、アジアでもマレーシアをはじめ、複数の国で電子インボイス制度の導入が進んでいます。マレーシアでは、2024年8月から年間売上が1億リンギット(約30億円)を超える企業に対して電子インボイスの利用が義務化されます。電子インボイスを適切に発行しない場合、厳しいペナルティが科されることもあります​。

2. 購買部門に求められる対応

購買部門は、サプライヤーとの契約や取引において、電子インボイス対応を含む正確な仕様書を作成する役割を担っています。これには、各国で異なる電子インボイスのフォーマットや報告要件を考慮する必要があります。例えば、EUではPEPPOL(電子データ交換の国際標準)が広く採用されています。購買部門がこれらの仕様を正確に反映しない場合、サプライチェーン全体が混乱するリスクがあります。

また、電子インボイスを導入しない企業との取引を制限する企業が増加しているため、購買部門はサプライヤーの選定にも影響を受けます。取引相手が電子インボイスに対応していない場合、ビジネスの機会を失う可能性も高まります​。

 

 

3. 営業部門にとっての影響

営業部門にとって、電子インボイス対応は、特に国際的な入札において必須です。EUやマレーシアなどの国では、電子インボイスに対応していない企業は、公共調達や大規模なプロジェクトへの入札資格を失う可能性があります。例えば、イタリアでは、すでに電子インボイスが義務化されており、これに対応していない企業は取引そのものが停止されるリスクがあります​

電子インボイスの導入は、単に請求書の発行方法を変えるだけでなく、営業活動全体のプロセスに影響を与えます。特に国際入札において、電子インボイスを適切に運用できる企業は、コンプライアンスの観点からも有利な立場を占めることができます。

4. ペナルティのリスクと実例

電子インボイスへの未対応は、各国で厳しいペナルティを招く可能性があります。例えば、イタリアでは、電子インボイスの発行を怠った場合、取引金額に対して最大180%の罰金が科されることがあります​(EY US

マレーシアでも、2024年6月以降、電子インボイスの発行義務を無視すると、取引停止や営業許可の取り消しなど、事業活動に大きな支障をきたすリスクがあります​
 

 

ペナルティの内容は国ごとに異なりますが、共通しているのは、電子インボイス制度が脱税防止のための重要な施策として導入されている点です。そのため、未対応や遅延は、単に法的リスクを負うだけでなく、ビジネスパートナーとの信頼関係を損ない、競争力を著しく低下させる可能性があります。

5. 対応策: 購買部門と営業部門の連携

電子インボイスの導入には、購買部門と営業部門の連携が不可欠です。購買部門は正確な仕様書を作成し、サプライチェーン全体で電子インボイスに対応できるようにする必要があります。一方、営業部門は、入札時に電子インボイス対応が求められることを常に意識し、取引相手の要件に合わせた対応を行うことが重要です。

また、企業全体でのシステム整備も不可欠です。電子インボイスを正確に発行し、税務当局に提出できるシステムを導入することで、業務効率の向上だけでなく、法的リスクの軽減も図れます。さらに、IT部門との連携も強化し、システムの安定運用をサポートする体制を整えることが求められます​。

 

 

6. まとめ: 電子インボイス対応の必要性

電子インボイス制度は、グローバルビジネスにおける新たな標準となりつつあります。特に、EUやマレーシアなどの国では、電子インボイスの義務化が進み、対応していない企業はペナルティを受けるリスクが高まっています。購買部門と営業部門は、これに迅速に対応することで、競争力を維持し、グローバル市場でのビジネスチャンスを最大限に活用することが可能です。

対応を怠ることで生じるリスクは非常に大きいため、企業全体で電子インボイス導入を推進し、取引先や入札プロセスにおいて不利な立場に立たないよう、準備を進めることが急務です。

 

Deloitte United States

EY US

PwC

avatar

Aki Fuchigami

University of Texas留学、後、セイコーインスツル株式会社での海外販社管理、オリックス海外現法での金融営業の経験を経て、欧州系税務戦略コンサルであるロベンダル・マサイ株式会社にて税務戦略部門設立。新たな税務コンサルティングソリューションを国内に展開し、100社以上のクライアントを獲得。 2010年に同僚と共にスピンアウトし、2010年11月11日オプティ株式会社を設立。経済産業省、独立行政法人 日本貿易振興会(JETRO)等での欧州付加価値税に関するコンサルティングや税務記事執筆等の業務を受託。現在、税務部門・データ部門では大手製造業を中心に400社超のクライアントに対してサービスを提供。 2012年より米国Avention社の開発した企業データベース”OneSource”の国内一次代理販売権を取得し、2013年1月10日にグループ会社としてワンソース・ジャパン株式会社を設立、同社代表取締役に就任。ワンソース・ジャパン株式会社では販売代理店である日経メディアマーケティング社と共に国内にてサービスを展開し、現在ではコンサルティング業界や金融機関等数多くの企業で使われるサービスとして定着させた。 2016年1月より世界最大級のVAT還付業者であるタックスバック・インターナショナル社のジャパン・カントリーマネジャーを拝命、タックスバックの有するサービスを国内にて展開中。

RELATED ARTICLES