はじめに
Amazon、eBay、 楽天、Shopify、WooCommerce、コロナ渦において世界で拡大し、今でやあらゆる企業が注目する「越境EC(E-commerce)」。越境ECはサイト作成後数分後から販売開始でき、世界の市場からの新たな売上機会になるといった良い面は紹介されます。反面、現地の税金や、様々なコストについてはあまり共有されていません。VATなど現地の税金は、販売者が現地の購入者に課税・徴収しますが、越境ECの場合でも課税・徴収・申告の場合は発生します。
税理士や弁護士等、国内の専門家が海外の税務や法務の知見が有る訳ではありません。
このコラムでは、越境ECの税務面について、豊富な経験を有するオプティ株式会社が「越境EC税務ナビ」としてQ&A形式で提供します。当越境EC税務ナビが、越境ECを考えている様々な企業のお役立ちになれば幸いです。
Q, Amazon欧州でのVAT登録をするほどの売上が無いのですが
こんにちは。当社ではAmazonドイツでの物品販売を行っています。今まではVAT番号の取得等を気にしていなかったのですが、昨今VAT番号が必要になったと聞いています。但し当社ではお恥ずかしい話ですがまだあまり売上が上がっておらず、Amazonドイツでは月間で50万円程度です。
よって、たとえVAT登録が格安であったとしても、なんとか回避したいです。何か策があればご教示頂けませんか。
A,コンプライアンスを遵守することにより、ビジネスは拡大できます
月間50万円の月商であれば、年間600万円程の売上かと思います。この位であればまだ規模は小さいかもしれませんが、事業としては十分成り立っている場合が多いです。但し、おそらくまだ1名体制でのビジネスであろうかと思います。
ECビジネスにおいては、家賃は掛かりません。加えて世界に対して販売が可能です。
反面、いくつかの経費が掛かります。
例えば下記のような経費が発生します。
越境EC販売(例:海外アマゾン)を利用して掛かる経費
システム利用料・・・AmazonやeBay等のマーケットプレイスのシステム利用料
広告宣伝費・・・・・Amazon内の広告代
運賃・・・・・・・・日本からドイツ等への運賃
税務・・・・・・・・VAT登録等の税務コンプライアンスコスト及び税金そのもの
年間600万円の売上で、仕入値が400万円の場合、利益が200万円程です。
すなわち、月間20万円以下の利益です。
但しここから上記に挙げた経費を支払っていくと、確かに税務業務に対して支払わなくても良いのでは無いかと思いがちです。しかし、税務申告を対応する当社としては、やはり「きちんと対応してください」と言わざるを得ません。ここでその理由をご説明します。
1, 徴税傾向は年々厳しくなってくるから
VATはじめ国際間接税は、越境ECセラーからも徴収しやすい税です。また自国のセラーはきちんと課税・徴税・納税しているのに、外国のセラーは課税・徴税・納税していません。これでは自国のセラーと不平等になります。
現にEUでは中国企業による格安の販売の他、VATを脱税し、納税をしていない事例を非常に重く受け止めています。
結果、EUでは英国やドイツをはじめ、各加盟国で非EUセラーに対する課税強化を打ち出しています。その中にはドイツのようにマーケットプレイスに対して連帯責任を求めるような場合もあります。
この流れで大手マーケットプレイス企業はVAT登録等の要件を満たさないセラーは強制的に排除しています。そしてこの流れは年々強化こそされるものの、軽くなることは無いと思われます。
自社で欧州の法律のことをどう考えるかは自社次第です。但し、Amazon欧州での販売にはVATの対応が不可欠となります。(なお、Amazon米国でも売上税を登録、申告する必要があります。)
2, ビジネス経費として割り切る必要があるから
当社ではVAT登録を10万円からと格安の対応をしています。また、3ヶ月からの契約とお手軽なプランも用意しています。
この格安の金額の理由として、コンプライアンス違反により日本企業のイメージ悪化を避けたいと考えているからです。
当社は専門家を組織し、非常に専門性の高いコンサルティングを実施しています。このため、国内の一般的な税理士事務所及び個人開業している税理士と比して時給が高い傾向にあります。しかし、VAT登録を過去膨大な数を対応しており、多くのノウハウを有しているため、金額を下げることが出来ています。
なお、ドイツの税務業務は日本の税務業務と比べて2倍〜10倍程の金額が掛かるのは仕方ないと思いますが、日本での税務申告代行も結構掛かります。(下記参照「税理士ドットコム」https://www.zeiri4.com/c_1/c_1027/)
(出所:弁護士ドットコム https://www.zeiri4.com/c_1/c_1027/)
日本の税務申告ですら年商1000万円未満でも月額2万円以上掛かります。しかし、税務は専門家に任せる方が確実に効率的です。間違えた申告の場合、申告後に修正する必要も発生します。
ビジネスとして大きく育てていくのであれば、税務対応をきちんとして、税務登録及び税申告をしていくことを提案します。
または副業レベルで抑えるのであれば、(米国Amazonでも売上税登録が現在必要となっているため)日本国内でのAmazonやeBayだけで利益を作っていくのが良いのでは無いかと思われます。
いずれにせよ、これからはVAT番号や売上税登録番号が無いと販売出来なくなりますので注意が必要です。
COMMENTS