はじめに
Amazon、eBay、 楽天、Shopify、WooCommerce、コロナ渦において世界で拡大し、今でやあらゆる企業が注目する「越境EC(E-commerce)」。越境ECはサイト作成後数分後から販売開始でき、世界の市場からの新たな売上機会になるといった良い面は紹介されます。反面、現地の税金や、様々なコストについてはあまり共有されていません。VATなど現地の税金は、販売者が現地の購入者に課税・徴収しますが、越境ECの場合でも課税・徴収・申告の場合は発生します。
税理士や弁護士等、国内の専門家が海外の税務や法務の知見が有る訳ではありません。
このコラムでは、越境ECの税務面について、豊富な経験を有するオプティ株式会社が「越境EC税務ナビ」としてQ&A形式で提供します。当越境EC税務ナビが、越境ECを考えている様々な企業のお役立ちになれば幸いです。
【Q】リバースチャージとは何ですか。
【A】
リバースチャージとは、課税取引であるものの、納税主体が本来サプライヤー側であるものを、受け手側が納税主体となる取引です。
例えば日本企業からEU企業に対してのサービス提供等の場合にはこれらのリバースチャージの適用が認められます。または、国外事業者による資産の譲渡や、建設作業などの特別の取引に係るリバースチャージなど、多岐に亘ります。
なお、リバースチャージは、国によってその対象も異なります。
リバースチャージを利用する場合は、下記の対応を実施する必要があります。
EUVAT指令に基づいたインボイス発行義務
リバースチャージの文言及び根拠条文番号を記したVATインボイスを発行する必要があります。また当該VATインボイスは英語または現地語で作成される必要があります。
- VATインボイス上には、税抜金額と税込金額を記入する必要があります。
- VATインボイス上には、販売相手の企業のVAT番号や住所、企業名等記載する必要があります。
- 課税対象活動が発生してから、国ごとに設定されている日付以内にVATインボイスを発行する必要があります。
VAT登録・申告義務
- ある取引(例:役務の提供)がリバースチャージの該当取引であるからといって、別の取引(例:資産の提供や、欧州域内の自社資産の移動、欧州域内での物品販売等)ではリバースチャージの適用がなされず、現地でのVAT登録が必要となる場合があります。
- VAT登録を一度したら、定期的な税申告は必須になります。具体的にはフランスは年間12回、ドイツは年間13回、オランダは年間4回、等です。
- リバースチャージの適用がされたからといって、VAT登録・申告義務が無いとは言い切れません。このため、一つの取引だけでなく全ての取引を確認する必要があります。
- また、リバースチャージが使える場合でも、VATインボイスの形式を満たしたインボイスでなければなりません。このため、事前に自社取引に即したVATインボイスについても欧州VATの専門家と準備する必要があると思われます。
イントラスタット申告義務、EC売上リスト申告義務
- リバースチャージ制度を利用できる取引であるからと言って、統計上の申告であるイントラシュタット申告やEC売上リスト申告は異なります。このため、リバースチャージ制度を利用できる取引であっても、これらの申告義務が満たされているかも確認する必要があります。
ペナルティ
- リバースチャージが掛かると思って、VAT登録・申告義務が発生しないと思ってみたものの、実際はリバースチャージが掛からずVAT登録・申告義務やイントラスタット申告義務やEC売上リスト申告義務が発生している場合もあります。
- このような場合、過去に遡って各種修正申告を行う場合、多額のペナルティが発生する場合があります。
- これに加えて、過去の取引のインボイス発行は、それ自体もペナルティ対象ですが、クライアント企業側での修正申告となる場合もあります。このため、取引前に、どのようなインボイスを作成するべきか、どのような文言を記入すべきかを欧州VATの専門家と相談されることをおすすめします。
免責事項
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