2019年9月30日以降、不正な売主(セラー)を排除することを含んだ当該法案に記載されている義務を遵守しないマーケットプレイスは、2019年3月1日からの未払いのVATに対して二次責任を負うことになります。
ドイツでは本来徴収できるVATが喪失している問題において、非EU企業への税務コンプライアンスの徹底をマーケットプレイス側にも求めています。
マーケットプレイスとは、AmazonやEbayに代表される、売り主と買い主をマッチングさせるITサービスを指します。
今回の法案のターゲットとしているのが非EU企業(中国、日本、米国等)のマーケットプレイスでの売主、すなわちAmazon Germanyでの日本セラーや中国セラーが対象となっています。
Amazonでの日本企業や中国企業は売主(セラー)として様々な商品を出店しています。
特に中国企業含めアジア企業はアグレッシブで、格安の商品を販売しているばかりか、VATの納税義務も果たさないため、ドイツのみならずEU全土でも問題となっています。欧州連合では、これら電子商取引のVAT詐欺によって毎年7000億円程の税収ロスがあると考えています。
法案では、AmazonやEbay等のマーケットプレイスが売主(セラー)がドイツのVAT登録済みであることを確認する義務があると定めています。加えて、マーケットプレイスに下記の情報を集めるよう規定しました。
あるいは、ドイツにおいてVAT法に従って遵法である旨の最新の納税証明書を税務当局に求めることができます。これが満たされず、そしてマーケットプレイスが売主に対して依然利用を許可し続けるならば、ドイツ税務当局はマーケットプレイス側に納税連帯責任を求めることになります。
非EUの売主は、納税証明書を入手するためにVAT申告業者を任命する必要があります。
(当社でもドイツでの登録・申告・納税証明書発行業務を実施しています。詳しくはこちら。)
法案が2019年中に法律制定のために進むことがどうかは現時点では不明確です。
とはいえ、下記の事象については予期されています。
英国は2018年3月にマーケットプレイスに対するVATルールを施行しました。
英国ではマーケットプレイス上の売主(セラー)は自社のVAT番号をマーケットプレイス上で掲載しなければならなくなりました。
現在、OECDではBEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)のプロジェクトとして、電子経済下での課税の可視化と課税強化を打ち出しています。加えて、各国毎の税務当局の連携が打ち出されています。
Amazonに代表されるマーケットプレイスでの税務申告の問題は世界レベルで急速に対応が求められている件であり、今後は税務コンプライアンスを無視するような悪質なセラーについては、国家間で連携して課税強化していく流れです。
現在もしも税務コンプライアンスに則った対応をしていない場合、軽い場合で2018年の3月からのVAT分、重い場合では過去全てのVAT及び重加算税や罰金等のペナルティが掛かるばかりか、刑事罰対象にもなる可能性があります。
是非早急に対応する必要があります。