オプティ株式会社最新ニュース

Q, 米国Amazonで販売している場合、売上税 (Sales Tax)は掛かりますか。(FBA倉庫利用及び直送ケース)

作成者: オプティ株式会社|Mar 12, 2021 10:19:00 AM

Amazon、eBay、 Shopify、コロナ渦において世界で拡大し、今でやあらゆる企業が注目する「越境EC(E-commerce)」。越境ECはサイト作成後数分後から販売開始でき、世界の市場からの新たな売上機会になるといった良い面は紹介されます。反面、現地の税金や、様々なコストについてはあまり共有されていません。VATなど現地の税金は、販売者が現地の購入者に課税・徴収しますが、越境ECの場合でも課税・徴収・申告の場合は発生します。

税理士や弁護士等、様々な国内の専門家であれ、海外の税務や法務の知見が有る訳ではありません。

このコラムでは、越境ECの税務面について、豊富な経験を有するオプティ株式会社が「越境EC税務ナビ」としてQ&A形式で提供します。

当越境EC税務ナビが、越境ECを考えている様々な企業のお役立ちになれば幸いです。

Q, 私は日本で法人を経営しています。現在、自社商品を欧州Amazonで販売しています。今後、米国Amazonでも販売しようと思っています。フランスのAmazon販売でも「FBA倉庫(Amazon管理の倉庫)」を利用しているので米国Amazonでも利用しようと考えています。
ただ、気掛かりなのが「売上税」です。当社はフランスではVAT番号を取得し、VAT申告もしています。アメリカでも同様に売上税申告をすべきなのでしょうか。

A. 米国Amazonで物品販売しようとしている場合で、現地の税制をどのようにすべきかを確認したい場合は下記のステップを踏む必要があります。

<踏むべきステップ>

1. 自社の現状を洗い出す

  • 日本の個人なのか法人なのか。
  • 米国に法人を設立したのか。
  • 過去にAmazon米国で販売したことがあるのか。その場合、直送かFBA倉庫利用だったのか。
  • 現地で倉庫利用の有無や、指揮監督下にある人間や営業行為を行う人がいるか。
  • 過去にAmazonからアカウント凍結などの措置を取られたことがないか。

2. 将来どうなりたいか、どうしたいのか

  • 売上高をどの程度まで大きくしたいのか。
  • そのために、直送販売をするのか、FBA利用をするのか。
  • FBA倉庫利用の場合は、どの程度の資産を投入するのか。
  • ShopifyやBASEなどの自社サイトや、IndiegogoやKickstarterなどのクラウドファンディングサイトを使っても販売したいのか。その場合の倉庫地はどこか。
  • 過去に数多くの販売を行なっていて、現地の税制上課税対象行為であった場合に、自主開示の減額措置などを利用して過去の分の税金を納めるか、それとも延滞税覚悟で静観するのか。

3. 税制の確認

  • 調査したい税目は何か(連邦法人税、州法人税、州売上税、州資産税)など。
  • PE分析なども調査するか。
  • 税制調査のためにどのようなアプローチをするか。
    (有償調査、無償でサイト検索、同業のセラー仲間への確認等)
  • 20州以上の複数州で売上税ネクサスに達してしまっている場合、全ての州で売上税登録をするか。

 

まずは自社の現状を洗い出します。その後、将来どのような販売方法にしたいかを明確化します。その上で該当する現地税制や日米租税条約等を確認する必要があります。

当社にご連絡頂くお客様でも、数多くのタイプのお客様がおります。日本の多くの中小企業の本年としては分からない税金は払いたくない、が本音だと思います。
また、現状で問題ないなら、また他のセラーが対応していないなら、今のままで良いと思う方も多いと思います。
その一方で、現地の税制上、売上税のネクサスだけでなく、州法人税や資産税のネクサスなども該当するケースも多発しています。当社でも過去数年分のEC販売の売上データを元に過去分申告を行なった何度も行なってきております。

  • Amazon米国で販売する際、売上税だけが重要ではありませんのでその点は気をつけて対応する必要があります。
  • 売上税だけ見ても、売上税導入している45州で異なる税制であるため、相当複雑な税制であることを理解し、信頼ある専門家と共に対応する必要があります。

売上税のネクサスについて

このコラムでは、連邦法人税や州法人税などの他の税目やPE分析などは範囲外ですので、まずは売上税のネクサスだけを考えてみます。

Amazon販売であれ、Shopify販売であれ、まずは現地での売上税ネクサス(税申告義務)が発生するかどうかを確認する必要があります。

まずはネクサスとして、通常のネクサスに該当するような行為が発生するか確認します。

売上税の徴収義務があるかどうかを決めるためのネクサス(Nexus)という概念がありますが、州外の業者に次のような事実があった場合、州内にネクサスがあるものとして、売上税の徴収義務が発生します。

ネクサスとは・・・

米国の州税である売上税の登録要件。下記の要件のいずれかを満たすと、現地の州にて売上税登録及び売上税申告を行わないといけないというトリガー。

<売上税ネクサスの発生要件>
  • 州内に代理人がいること
  • 州内での広告宣伝
  • 州内に運搬車両があること
  • 州内での所有権の移転
  • 州内での勧誘
  • 州内での販売促進活動
  • 州内に資産を所有していること
  • 州内でサービスを提供していること

上記の中で、FBA倉庫の利用は州内での資産の所有に該当すると考えられるため、FBA倉庫の利用地での売上税登録及び売上税申告が発生すると考えられます。つまり、フランスのVAT番号同様、売上税登録及び申告が必要となります。

  • 連邦法人税や州法人税など、税目毎に異なるネクサスがございます。

また、FBA倉庫地による通常のネクサス以外にも、エコノミック・ネクサス、アフィリエイト・ネクサス、クリックスルー・ネクサス等、様々なネクサスが発生しているかどうかを確認する必要があります。

これらのネクサスの一つでも発生している場合、現地での売上税(Sales and Use tax)の登録義務及び申告義務が発生します。

エコノミックネクサスとは・・・

2018年のWayfair vs South Dakota判決より発生したネクサス。消費地である州で一定の売上高や取引回数を超える取引の場合、たとえ消費地に居住地を有していなくても売上税の課税トリガーを引いたことになり、現地の売上税申告をしなければならないとするルール。
多くの州では「年間売上10万ドルまたは年間200取引」がトリガーであるが、州により異なる。
エコノミック・ネクサスに到達しなければ現地で売上税登録をしなくても良いと勘違いする越境ECセラーが依然として多くいるが、エコノミック・ネクサス以外のネクサスについても該当した場合、売上税登録・申告の義務が発生する。

また、全ての州ではありませんが、多くの州ではマーケットプレイス・ファシリテーター法という法律が適用されております。

 
マーケットプレイス・ファシリテーター法(Marketplace Facilitator Law)とは・・・
セラーの代わりにAmazonが代理で徴税・納税することを定めた法律のこと。各州毎に内容が若干異なる。

マーケットプレイス・ファシリテーター法のため、セラーの中には、「日本企業は現地での売上税登録を行う必要はなく、AmazonやeBay等のマーケットプレイスが自社の代わりに売上税の課税・徴税・納税の全てを行う」と勘違いしがちです。

しかしこれは間違いです。

実際には、FBA倉庫を利用をしている場合は、現地での在庫の所有に該当すると考えられるため、通常の売上税ネクサスに該当すると考えられます。この結果、現地での売上税登録・申告が必要となると考えられます。

(実際にはAmazonだけでの売上だけなら、売上税の納税分だけはゼロ申告を行うことになります。ただし、Amazonで売り上げた金額自体はに申請する必要があります。Shopifyなどの自社サイト型で販売した場合には別途Shopify分の金額も入れて申告を行う必要があります。)
また、FBA倉庫のある州のうち、マーケットプレイス・ファシリテーター法が適用となっていない州が6州あります。(執筆時点)

これらの州ではそもそもAmazonが代理徴収しないはずなので、その場合売上税登録(sales tax permit)・課税・徴収・申告・納税を外国セラー自身が対応する必要があります。

またもしもAmazonが代理徴収していた場合、貴社は売上税分を受領しているはずです。このため、売上税申告・納税を外国セラー自身が対応する必要があります。

Amazonの税務文書ライブラリー

アマゾンの税務文書ライブラリーでは、

  • セラー報酬に関するタックスインボイス
  • 免税証明
  • マーケットプレイスについてのタックスインボイス

が格納されています。また、徴税についてもマーケットプレイスが徴収した金額を見ることができます。これらのレポートを駆使して自社のAmazon上の売上がいくらなのかを絶えず確認する必要があると思われます。

 

Amazon米国出店者として確認すべき項目
・Amazon米国での全体の販売金額
・Amazonが代理徴収した金額及び税額
・Amazonが納税した金額
・Amazonが代理徴収していない税額
・自社が税申告しなければならない金額

まとめ

  • 米国Amazon販売の場合でも、FBA倉庫利用州において売上税ネクサスが発生すると考えられる。
  • FBA倉庫が所在する州は30州以上であり、30州で売上税登録・申告義務が発生する。
  • FBA倉庫のある州でマーケットプレイス・ファシリテーター法が適用されていない州は6州あり、これらの州ではすぐにでも売上税登録・申告を行う義務がある。
  • Amazon米国での販売の際は、米国の税金(連邦法人税、州法人税、州売上税、州資産税など)に注意する必要があること。
  • このブログ上の判断については、個別の会社毎のビジネス条件を確認した上で、課税判断を行う必要がある。条件が一つでも異なると課税結果が全く異なるものになることに留意すること。

現在のAmazonドイツやフランスではVAT番号を記入しないとAmazonアカウントを開設できません。今後アメリカにおいても、売上税番号をAmazonに登録しない、または売上税申告を行なっていないセラーについては、将来Amazonがアカウント凍結などを行う可能性もあるかもしれません。

当社では米国売上税のアドバイザリーサービスを行っており、数多くの日本企業への売上税アドバイス及び売上税申告を行っています。また過去の販売額についての自主開示した場合のリスク分析、実際の自主開示対応なども実施しています。

詳しくはお問い合わせ願います。

<関連サービス>

<免責事項>

このブログでの説明はあくまでもブログ執筆時点の一般的な見解です。米国の税務アドバイスは非常に複雑です。契約内容、在庫地、商品種別、販売先、プラットフォーマー利用有無、販売時点などの多くの条件を伺った上で各州の該当条文を確認して初めて、解が出せるものです。またそのためには米国内の弁護士や会計士などと確認する作業があります。プラットフォーマーの定義にせよ、在庫の定義にせよ、州によって異なります。このブログでの記載事項を元にしたいかなるビジネス上の判断について当社では一切責任を負いかねますのでご了承願います。より正確なアドバイスが必要な場合当社の有償税務アドバイザリーサービスをご検討願います。