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ECセラーのEPR義務 – 誰が対象で、違反するとどうなるのか?

欧州連合(EU)では、環境負荷を軽減するための規制として**拡大生産者責任(EPR: Extended Producer Responsibility)**が導入されています。この制度は、製品の販売者がその廃棄・リサイクルに関する責任を負う仕組みです。 本記事では、EPRの対象となるセラーの条件、EC事業者の具体的な義務、そして違反した場合のペナルティについて詳しく解説します。

1、EPRの対象となるセラーとは?

EPRの対象となる「生産者(Producer)」とは、EU市場において特定の製品を流通させる事業者のことを指します。この対象には、EU域内外のセラーを含み、販売形態によってEPRの義務が異なります。

まず、自社ブランドの製品を販売している事業者は、生産者として扱われるため、EU市場での販売を行う際にはEPRに従う必要があります。また、海外からEUへ商品を輸入し販売する場合も、「生産者」とみなされ、EPR登録および義務の履行が求められます。

さらに、EU内の流通業者や小売業者であっても、規制対象製品の販売を行う場合はEPRの義務を負います。特に、AmazonやShopifyを通じてEU市場向けに販売を行う場合、各国のEPR制度に適合する必要があります。

AmazonのFBA(Fulfillment by Amazon)を利用している場合も、規制対象となる可能性があります。EU市場へ商品を出荷する際、販売国のEPR登録を行わなければ、Amazonの規則により該当商品の販売が停止されることがあります。

2、ECセラーが果たすべきEPRの義務

ECセラーは、EPRに基づき、販売する国ごとに登録、報告、支払いといった義務を果たす必要があります。特に、規制対象製品(包装、電子機器、バッテリー、繊維製品など)を扱う場合、それぞれのカテゴリごとに適切な対応を行わなければなりません。

まず、EPRの登録が求められる国では、販売者は管轄当局に対して申請を行い、EPR登録番号を取得する必要があります。この番号は、Amazonのセラーアカウントにも登録する必要があり、未登録の場合は該当商品の出品が制限されることがあります。

次に、EPRの登録が完了した後は、販売量に応じた報告と支払いを行わなければなりません。EUでは、多くの国で月次または四半期ごとの報告が義務付けられており、販売した商品の重量や材質ごとに分類したデータを提出する必要があります。また、EPRの費用は、使用する素材やリサイクルにかかるコストに基づき算出されるため、事前にコスト計算を行い、適切な対応を取ることが求められます。

さらに、EPR義務を適切に果たすため、多くの企業は**生産者責任機関(PRO: Producer Responsibility Organization)**と提携しています。PROは、EPRに基づく義務の履行を代行する機関であり、リサイクルプロセスの管理や規制当局への報告をサポートしてくれます。ECセラーにとって、PROとの提携はEPRコンプライアンスを効率的に進めるための有力な選択肢となるでしょう。

Amazonはすでに、フランスとドイツにおいてEPR登録を義務化しており、EPR未対応のセラーに対しては、登録を完了するまで該当商品の販売を停止する措置を取っています。このため、EU市場で販売を行うECセラーは、販売先のEPR規制を理解し、適切な手続きを行うことが不可欠です。

各国ごとに、具体的に求められる対応が異なります。

3、EPR違反時のペナルティ

EPRの義務を果たさなかった場合、EU加盟国ごとに厳しいペナルティが科される可能性があります。

まず、各国の規制当局による罰則があります。例えば、ドイツでは、包装法(VerpackG)違反により最大€200,000(約3,200万円)の罰金が科される可能性があります。フランスでは、EPRに未登録の状態で規制対象商品を販売すると、カテゴリごとに最大€15,000(約240万円)の罰則が適用されるケースがあります。その他のEU加盟国でも、EPR違反に対する制裁措置が導入されており、違反が発覚した場合、厳しい対応が取られる可能性があります。

次に、AmazonやShopifyといったマーケットプレイスが取る制裁措置についても注意が必要です。Amazonは、EPR登録が未完了のセラーの商品を削除し、販売を停止することを明確に規定しています。これは、AmazonがEUの規制を遵守するために導入している方針であり、セラーはこれに従わなければなりません。Shopifyのセラーも同様に、EPRコンプライアンスを怠ると、該当商品の削除やアカウント制限が発生する可能性があります。

また、EPR違反は企業の評判にも悪影響を及ぼします。消費者や取引先からの信頼を失うだけでなく、一部の物流業者は、EPR未登録のセラーの商品を取り扱わないこともあります。これにより、販売の機会を大きく失うリスクが生じるため、EPRの義務を確実に果たすことが求められます。

まとめ

EU市場で販売を行うECセラーは、まず自社がEPRの「生産者」に該当するかを確認し、適切な登録を行う必要があります。その上で、販売量に応じた報告と支払いを怠らず、EPRの義務を果たすことが求められます。

EPR違反により、高額な罰金、商品削除、アカウント停止などのリスクがあるため、コンプライアンスを徹底することが重要です。特に、AmazonやShopifyを利用するECセラーは、EPR登録が未完了の状態で販売を行わないよう、事前に必要な手続きを進めることを強く推奨します。

当社(オプティ株式会社)では、各国及び各種のEPR登録・申告におけるサービスも提供しておりますので、是非お問い合わせください

注記: このコラムは情報提供を目的としたものであり、法的助言を提供するものではありません。EPRまたはGPSRへの準拠については、専門家にご相談ください。