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EU加盟国におけるEPRの規制状況と各国の具体的な取り組みについて

拡大生産者責任(EPR)は、EUにおける環境政策の重要な柱のひとつです。特に、AmazonやShopifyを利用して越境ECを行う企業にとっては、各国ごとに異なるEPRの適用ルールを理解し、適切に対応することが求められます。本記事では、EU全体のEPR規制の枠組みと、主要加盟国における具体的な適用状況について解説します。

1. EU全体のEPR規制:主要な法的枠組み

EUのEPR制度は、主に廃棄物の発生抑制と持続可能な資源利用を目的とし、各国での導入を義務付けています。まず、EPRの法的基盤となる主要なEU指令を紹介します。

廃棄物枠組み指令(2008/98/EC)は、EU全体での廃棄物管理の基本原則を定めており、EPRの実施を加盟国に求めています。また、包装および包装廃棄物指令(94/62/ECおよび2018/852改正)は、企業に対し、使用済み包装の適切な回収とリサイクルを義務付けています。さらに、WEEE指令(2012/19/EU)は電子機器の廃棄物処理、電池指令(2006/66/EC)は電池のリサイクルについて、それぞれ生産者の責任を明確に規定しています。

EPRの適用を受ける企業は、対象製品の販売に際して、各国のEPR機関に登録し、一定のエコ・コントリビューション(環境負担金)を支払う必要があります。また、販売した製品の回収・リサイクル義務を負い、定期的なデータ報告が求められます。さらに、オンラインマーケットプレイスに関する規則も強化されており、AmazonやShopifyなどのプラットフォーム事業者は、出品者が適切にEPR登録を行っているか確認する責任を負っています。

EU全体でのEPRの執行は、各国の監督機関によって行われ、違反した場合には罰金の支払いや販売停止措置が課される可能性があります。欧州委員会も各国の実施状況を監視し、統一的な基準を維持するための調整を進めています。

各国ごとに、具体的に求められる対応が異なります。

2. 主要EU加盟国におけるEPRの具体的な適用状況

2.1. ドイツ

ドイツでは、EPR関連法としてVerpackG(包装法)、ElektroG(電子廃棄物法)、BattG(電池法)が施行されています。VerpackGの下では、すべての包装材を使用する事業者がLUCID包装登録を行う義務があります。また、ElektroGに基づき、電子機器販売者はStiftung EARへのWEEE登録が求められます。さらに、電池を取り扱う場合には、BattGに従って適切なリサイクル計画を実施する必要があります。

AmazonドイツはEPR規制の遵守を厳格に監視しており、登録を行っていない販売者の出品を自動的に停止する措置を講じています。違反した場合、最大20万ユーロ(約3,000万円)の罰金が科される可能性があります。

2.2. フランス

フランスでは、EPRの義務に加え、独自のTrimanロゴ表示規則が導入されています。これは、製品の適切な廃棄方法を消費者に示すためのものです。包装、電子機器、家具、テキスタイルなど、多くの製品カテゴリーがEPRの対象となっており、登録と環境負担金の支払いが義務付けられています。

また、フランスのEPR制度は「汚染者負担」原則を強化しており、企業はリサイクル可能な包装を優先的に使用するよう求められています。違反した場合は、販売停止措置や罰金が科される可能性があり、AmazonやShopifyも適用対象となるため、出品時には事前の確認が必要です。

2.3. イタリア

イタリアでは、CONAI(全国包装コンソーシアム)がEPR登録の管理を行っています。包装を使用するすべての企業はCONAIに登録し、材質別(プラスチック、紙、ガラスなど)のエコ・コントリビューションを支払う必要があります。電子機器や電池については、別途WEEEおよびBattGの規則に基づいた登録が求められます。

イタリアのEPR施行は地域ごとに若干異なる部分があり、企業は事業を展開する地域の規則を個別に確認する必要があります。

2.4. スペイン

スペインでは、2022年に新たなEPR規則が導入されました。特に、Royal Decree 1055/2022により、国外企業であってもEPR登録が義務付けられました。AmazonやShopifyの販売者も対象となり、適切な登録を行わないと出品停止措置を受ける可能性があります。

また、スペインでは、リサイクルしやすい包装材を使用する企業には環境負担金の軽減措置が適用されます。その一方で、詳細な監査と報告義務が課されており、コンプライアンスの維持には一定のコストがかかります。

2.5. その他の加盟国

オーストリアでは、オンライン販売者に対するEPR報告義務が厳格化されています。オランダでは、政府がエコ・コントリビューションの徴収を厳しく監督しており、企業の遵守状況が厳格に管理されています。スウェーデンでは、EPRの対象がテキスタイルや家具にまで拡大され、規制の範囲が広がっています。ポーランドでは、未登録の販売者に対し厳しい罰則が課されるほか、エコラベルの表示が義務付けられています。

まとめ

EPRはEUの主要な環境規制として確立されており、各国ごとに異なる適用が存在します。EU全体で一定の標準化が進められていますが、加盟国ごとのEPR要件の違いにより、企業にとってはコンプライアンスの負担が増しています。違反した場合、高額な罰金や販売停止リスクがあるため、EU域内で事業を展開する企業は、各国の規制を把握し、適切に対応することが求められます。

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注記: このコラムは情報提供を目的としたものであり、法的助言を提供するものではありません。EPRまたはGPSRへの準拠については、専門家にご相談ください。