8. 資産の譲渡
三角取引とは
三角取引とは、同一資産を対象とする資産の譲渡に、異なる加盟国の三人の事業者(3社)が関わり、資産が最初の事業者から最後の事業者に直送されるような取引です。このような取引の場合、2社目の企業は通常は発送国か仕向国のVAT番号を所有しなければならないところ、既に所有するVAT番号を利用した取引を行うことが出来るという例外措置がございます。(三角取引の簡素化規定)
三角取引は連鎖取引の一種です。
【例】
フランスで生産された衣料品をフランスの製造業者がドイツの仲介業者を通じてオランダの小売店に販売。衣料品はフランスの製造業者の倉庫からオランダの小売店に直送される。
上記の場合、ドイツの仲介業者は、フランスでのVAT番号もオランダのVAT番号も新たに取得することなく、既に所有するドイツのVAT番号を利用することが出来ます。
連鎖取引の課税の仕組みを使うと、三角取引の場合にも、中間事業者が出荷国または着荷国で付加価値税の納税義務を果たさなければなりません。三角取引の簡素化ルールの立法趣旨としては、出荷国または着荷濃くに設立された者ではない中間事業者が、自らの加盟国でVATの申告義務を果たせるようにするためになります。
三角取引の簡素化ルールは、指令上の以下の複数の条文の組み合わせから成立しています。
【42条】
中間事業者が利用するVATID番号を発行した加盟国でのみなしEU域内取得の適用除外
【138条1項】
出荷地である加盟国でのEU域内非課税納品
【141条】
着荷地である加盟国でのEU域内取得の課税免除
【197条】
中間事業者で行う資産の譲渡へのリバースチャージ制度の適用
三角取引の簡素化規定を使えば、自社であまり使っていないと思われる既に所有しているVAT番号を利用して、EU域内でビジネスを行うことが可能です。
例えば、先ほどの事例のように、ドイツの仲介業者は、フランスでのVAT番号もオランダのVAT番号も新たに取得することなく、既に所有するドイツのVAT番号を利用することが出来る場合のように、です。
三角取引の簡素化規定は、非常に複雑な制度であると同時に、重要性も高い制度になります。そのため、制度自体の正確な理解と共に、出荷地と仕向地である加盟国での現地法の確認が必須です。