はじめに
昨今、グローバル市場での利益創出を狙い、様々な企業が海外企業とビジネスを行っており、その数は年々増加傾向にあります。日本企業が海外において、または海外企業とビジネスを行う場合、マーケティング面や物流面など、様々な側面をチェックした後にビジネスを開始されることでしょう。同様に各国毎の法務上・税務上の規制などに対しても十分に検討されていることでしょう。
しかしこの点、欧州の消費税である欧州付加価値税(Value Added Tax :略称 VAT)については、欧州各国の税務当局が情報を積極的に提供しているにも関わらず、十分に検討されずにビジネスを開始されている会社が多くように感じられます。
この理由の一つとして、欧州付加価値税法をはじめとして国際間接税に精通した専門家が国内では少ないため、企業の税務部といえども、これら国際間接税に関するコンプライアンスやタックスプランニングについてきちんとした知識がないということが挙げられます。
また、「VAT還付」制度については経験のある企業でも、現地で発生する義務である「VAT登録」やそれに付随する「税務申告」のケースについてあまり考えていないように感じられます。欧州付加価値税はじめ米国売上税などの国際的な間接税は、現地の課税要件を満たした場合、外国企業による物品や役務の提供であっても現地の関連法規に従う必要があります。
昨今、欧州税務当局はEU域外の企業による欧州での課税活動に関して厳しく取り締まるようになってきています。この背景として、①欧州付加価値税はインボイスなどの「形式」を重視する税であるので税の未納付やコンプライアンス違反を容易に発見されることが多いこと、②各国の税収割合(直間比率)が世界的に「直接税」から「間接税」へシフトしていること、といった理由の他にも、③2010年1月から施行された新しいVATの取り決め(VATパッケージ)の影響から外国企業の課税活動にも着目されるようになったことがその理由として挙げられます。
このような傾向を受け、過去の自社の取引について欧州税務当局から突然課税漏れの指摘を受け、税申告の要求を受けている日本企業が多くなってきています。当社においても、各国の税務当局との交渉を依頼される企業やその対応策に追われるケースが最近特に多くなってきています。
そこでこの『欧州付加価値税ガイドブック』では、日本企業が通常盲点となりがちな欧州付加価値税の仕組みや事例を説明し、貴社の欧州ビジネスの際の事前検討に役立てて頂ければと考えております。
当ガイドブックにより、皆様の欧州付加価値税に対する理解が深まり、欧州取引時の法令順守少しでも寄与することによって貴社の欧州ビジネスの御発展に貢献できれば幸いです。
オプティ株式会社